47都道府県792市を全部調べた
このサイトでは2026年3月14日から約3週間かけて、47都道府県792市の移住支援制度を一つずつ調べました。この記事は、その全データから見えてきた日本の移住支援の全体像をまとめたものです。
最初は山梨県13市から始まり、中部→関東→東北→近畿→四国→中国→九州・沖縄→北海道と、22日間で全国制覇しました。
基本統計
| 指標 | 数値 | 割合 |
|---|---|---|
| 調査した都道府県 | 47 | — |
| 調査した市 | 792 | — |
| 移住支援金対象市 | 571 | 72% |
| 空き家バンク運営市 | 654 | 83% |
| お試し移住制度あり | 292 | 37% |
移住支援金は約8割の市が対象、空き家バンクも約8割が運営。この2つはもはや「標準装備」と言っていいレベルです。一方、お試し移住はまだ37%。ここに伸びしろがあります。
地域別の比較
| 地域 | 市数 | 支援金対象 | 空き家バンク | お試し移住 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 35 | 94% | 83% | 37% |
| 東北 | 77 | 99% | 90% | 45% |
| 関東 | 180 | 36% | 65% | 17% |
| 中部 | 164 | 98% | 93% | 41% |
| 近畿 | 125 | 52% | 70% | 26% |
| 中国 | 54 | 91% | 98% | 74% |
| 四国 | 38 | 87% | 100% | 79% |
| 九州・沖縄 | 119 | 76% | 91% | 38% |
東北99%・中部98%と、東日本の非東京圏はほぼ全市が手を挙げている。 北海道も94%と高水準(岩見沢市・滝川市を除く33市)。
四国は空き家バンク100%+お試し移住76%。 移住の「受入インフラ」が最も整っている地域。
中国地方は空き家バンク98%+お試し移住72%。 四国と双璧。
関東は全指標で最下位。 東京圏であることの制約が大きいが、茨城県や群馬県など例外もある。
全国制覇で見えてきた7つの傾向
1. 「東京圏」の壁が大きい
220市が移住支援金対象外で(2026年8月4日の再調査反映後)、その多くが東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)と大阪に集中しています。
ただしこの壁は絶対ではない。茨城県は32市中23市が対象、千葉県も11市が対象。「東京圏=全部ダメ」ではないことが、データから明確に分かりました。
2. 空き家バンクは「あるけど使われていない」問題
654/792市(83%)が空き家バンクを運営していますが、実際の成約件数を見ると差が大きい。三豊市の592件のような成功例がある一方、登録物件が数件しかない自治体も。
空き家バンクの課題は「物件を集めること」。空き家の所有者が登録してくれないと、バンクがあっても機能しません。リフォーム補助金の充実度が成約に直結する傾向が見えました(詳しくは「空き家バンクとは何か」)。
3. お試し移住の地域格差が顕著
お試し移住は四国76%、中国72%に対して、関東17%。4倍以上の差があります。
大阪府はお試し移住が0市。東京都も0市。都市部は「日帰りで見に行ける」からお試し制度の必要性が低い面もありますが、実際に住んでみないと分からないことは距離に関係なくあります。
4. 支援金の「子ども加算」に落とし穴
ほとんどの自治体で子ども1人あたり100万円ですが、室戸市30万円、駒ヶ根市30万円、安曇野市30万円、茅野市20万円、丸亀市・観音寺市・三豊市30万円のように独自金額の自治体や、上野原市・串間市・伊那市のように加算自体がない自治体があります。子ども2人で最大200万円の差が出ることも。
5. 独自制度の有無が差別化ポイント
国の移住支援金は金額が統一的なので、自治体間の差は「独自制度」で生まれます。
- 飛騨市の包括的パッケージ(見学→宿泊→引越→電子通貨奨励金)
- 明石市の5つの無料化
- 福島12市町村の全国対象200万円
- 岐阜県の林業就業移住支援金(東京圏以外から移住して林業に就く方が対象・単身60万/2人以上世帯100万)
- 宮崎県の3大都市圏+福岡県対象の移住支援金
- 五島市の離島移住モデル(年間200人以上)
- 都城市の子ども加算最大300万円
こういった独自の取り組みは、他のまとめサイトでは見えにくい情報です。1市ずつ調べたからこそ見つかったものが多いです。
6. 沖縄は全く違うゲーム
沖縄県は長らく全11市が国の移住支援金に不参加という全国で唯一の県でした(令和8年度に石垣市がUターン限定型で参加しましたが、通常型はゼロのまま)。空き家バンクも2/11市のみ。お試し移住は1市のみ。
理由は明確で、行政が支援しなくても移住者が来るから。移住人気が高すぎて、むしろ住宅不足が課題になっています(特に宮古島市)。
宮古島市の「統計みやこじま」第21号を見ると、令和7年の転入は4,053人(うち県外2,645人)、転出は3,743人(うち県外2,116人)で、社会増は+310人。人の出入りだけを見れば流入超過です。一方で出生387人・死亡757人の自然減△370人があるため、人口全体としては△60人の減少でした。**「人は来ているが人口は減る」**という構造で、移住者の流入と人口維持は別問題であることが分かります。
- 情報源: 統計みやこじま(第21号)(宮古島市)
同じ構造は県全体でも起きていました。沖縄県の「令和7年人口移動報告年報」(令和6年10月〜令和7年9月)では、社会増減が+3,087人で転入超過である一方、自然増減が△3,698人(出生11,588人・死亡15,286人)。令和7年10月1日現在の総人口は1,466,454人で、前年から611人の減少(△0.04%)となり、県の推計では3年連続の減少です。移住先として人気があることと、県の人口が保てることは、別々に見る必要がありそうです。
- 情報源: 令和7年人口移動報告年報〔PDF〕(沖縄県企画部)(2026年8月4日確認)
支援制度の充実度と移住者数は必ずしも比例しない、という重要な事実を沖縄が証明しています。
7. 北海道は33市が対象の大市場
北海道は35市中33市が移住支援金対象(岩見沢市・滝川市を除く)。面積が広大なため、同じ北海道でも札幌圏・旭川・函館・釧路・帯広で全く異なる気候と生活環境があります。釧路市の「避暑地移住」、千歳市の「ラピダス効果」、伊達市の「北の湘南」など、市ごとの個性がはっきりしているのが特徴です。
調べて分かった「調べ方」のこと
792市を調べるプロセスから得た、移住情報の調べ方に関する知見も共有します。
自治体のサイトは見つけにくい: 移住支援制度の情報は「○○市 移住」で検索しても、トップに出てこないことが多い。「○○市 移住支援金」「○○市 空き家バンク」のように具体的なキーワードで検索する必要があります。
CMS移行でURLが変わる: 自治体のサイトはCMS(ウェブサイト管理システム)の移行で全URLが変わることがあります。以前あったページが見つからないときは、自治体名+キーワードで再検索すると新URLが見つかることが多いです。792市調べる中で、リンク切れの修正を何百件もやりました。
年度替わりで制度が変わる: 自治体の制度は4月に変わることが多い。3月に調べた情報が4月には古くなっている可能性があります。このサイトで調査日を必ず記載しているのはそのためです。
三者サイトの情報は信用しない: 補助金まとめサイトの情報は誤りが多い。このサイトの調査でも、三者サイトと公式サイトで金額が10倍違うケースがありました。必ず公式サイトで確認してください。
独自の移住ポータルを持つ自治体は情報が充実: 「はまだぐらし」(浜田市)、「LOVE SAIJO」(西条市)、「暮らすさき」(須崎市)など、独自ポータルを持つ自治体は移住情報が格段に見つけやすい。逆に、市の公式サイトの一隅に移住ページがある程度の自治体は調査が大変でした。
この792市データの使い方
- 移住先の候補を絞るとき: 地域の傾向をつかんでから、個別の市を調べるのが効率的
- 支援制度を比較するとき: 都道府県ごとの比較記事で県内の横比較ができる
- 空き家バンクを探すとき: 空き家バンクの基礎知識を読んでから各市ページへ
- コスト計算するとき: 移住コストの試算で全体像を把握
この自由研究のこれから
792市で全47都道府県を制覇しましたが、これはあくまで「市」の調査。日本には町村を含めると1,700以上の自治体があります。まだ半分以下です。
また、この792市のデータは時間とともに古くなります。年度替わり(4月)の制度変更を追いかけ、情報を更新し続けることが、このサイトの信頼性を維持する上で最も重要な課題です。
調べるほど日本の自治体の多様さに驚かされます。人口2,600人の歌志内市にも、東京23区にない独自の制度がある。支援金ゼロの沖縄にも、人が集まる理由がある。そういう情報が届くべき人に届けば、選択肢は広がる。そう思ってこの自由研究を続けています。
※ この記事は個人の調査に基づくものです。 ※ 調査データは2026年3月14日〜4月4日の調査に基づきます(47都道府県792市)。