「東京圏だから移住支援金がもらえない」は本当か
移住支援金は「東京圏から地方へ」が基本の枠組みです。じゃあ東京圏に住んでいる人が東京圏内で引っ越しても何ももらえないのか? そもそも「東京圏」の線引きはどこなのか? 792市のデータを調べてみました。
まず数字を見てみる
792市のうち、国の移住支援金制度の対象になっていないのは**220市(28%)**でした(2026年8月4日時点。令和8年度の再調査と、その後の埼玉県3市の訂正を反映しています。当初調査時の「175市」から、制度を終了・離脱した市と、当初の調査誤りの訂正で増えました)。
| 都道府県 | 対象外の市 | 全体 | 対象外率 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県 | 37市 | 40市 | 93% |
| 大阪府 | 33市 | 33市 | 100% |
| 東京都 | 26市 | 26市 | 100% |
| 千葉県 | 26市 | 37市 | 70% |
| 神奈川県 | 18市 | 19市 | 95% |
| 福岡県 | 14市 | 29市 | 48% |
| 沖縄県 | 10市 | 11市 | 91% |
| 茨城県 | 9市 | 32市 | 28% |
| 滋賀県 | 9市 | 13市 | 69% |
| 兵庫県 | 7市 | 29市 | 24% |
| 京都府 | 7市 | 15市 | 47% |
| 愛媛県 | 5市 | 11市 | 45% |
| 愛知県 | 3市 | 38市 | 8% |
| 広島県 | 3市 | 14市 | 21% |
| 鹿児島県 | 3市 | 19市 | 16% |
東京都は全26市が対象外です。沖縄県は令和8年度に石垣市がUターン限定型で参加し「全11市不参加」ではなくなりましたが、通常型はゼロのまま(移住人気が高すぎて行政支援の必要性が低い構造)。埼玉県もほぼ全滅(40市中37市)。
大阪府は東京圏ではないのに全33市が対象外です。この記事では当初、その理由を「大阪府が移住支援金の送出側に位置づけられているため」と書いていましたが、2026年8月に調べ直したところ誤りでした。同じ大都市圏の愛知県は35市が実施しており、大阪府も制度のうえでは移住先になれます。令和8年度の実施市町村一覧に府内の市町村が1つも載っていない、というのが実際のところです。
意外なのは福岡県で、東京圏でもないのに29市中14市が不参加。福岡都市圏のベッドタウンは支援金を出さなくても人が来るため、実施は筑後・筑豊東部・京築の市に偏っています。
「東京圏」の線引きが面白い
実は「東京圏=全部ダメ」ではありません。東京圏内でも条件不利地域に指定されている市は対象になります。
茨城県は「首都圏だけど東京圏ではない」
茨城県は首都圏の一角ですが、国の制度上の「東京圏」(埼玉・千葉・東京・神奈川)には含まれず、32市中23市が移住支援金対象です。従来から不参加なのはつくばエクスプレスや常磐線快速沿線の6市(守谷市、取手市、牛久市、鹿嶋市、つくばみらい市、神栖市)で、令和7年度末にはつくば市・ひたちなか市・常総市も事業を終了しました(2026年7月30日再調査。当初の「26市対象」と対象外市の列挙誤りを訂正しています)。
常陸太田市は市独自の制度も持っています。テレワーク移住奨励金(子育て世帯30万円/それ以外20万円)と、転入促進助成金(最大100万円)。ただし後者は転入者なら誰でも受け取れる制度ではありません。市が指定した定住促進住宅用地を2年間無償で借り、その間に50平方メートル以上の住宅を建てて住むと土地が無償譲渡される、というパッケージに付いてくる助成金で、2026年1月時点の対象は里美白幡台団地(大中町)の5区画だけです(2026年8月8日に訂正)。
千葉県は「外房・南房総・北東部」が対象
千葉県37市のうち対象は11市だけ。東京に近い西側(船橋市、松戸市、柏市など)はほぼ全滅で、対象になるのは外房(いすみ市、勝浦市)、南房総(館山市、鴨川市)、北東部(銚子市、旭市)の条件不利地域です。
いすみ市は「住みたい田舎ランキング」で8年連続1位の実績があり、移住支援金なしでも人気の自治体です。
神奈川県はたった1市だけ
神奈川県19市のうち対象はなんと**三浦市だけ**。横浜も川崎も相模原も全部対象外です。三浦市は三浦半島の先端に位置し、条件不利地域として唯一対象になっています。
埼玉県は3市のみ
埼玉県が公表している移住支援金の対象地域は県内15市町村で、そのうち市は秩父市・飯能市・本庄市の3市だけです(残り12は越生町・小川町・川島町・吉見町・鳩山町・ときがわ町・横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町・東秩父村・神川町)。さいたま市や川口市はもちろん対象外です。
この記事では当初「深谷市・日高市を含む6市が対象」と書いていましたが、2026年8月に県公式の一覧で確認したところ誤りでした。深谷市には「深谷市移住支援金」という名前のよく似た制度がありますが、これは国の制度とは別の市独自制度で、支給も地域通貨ネギーです。お詫びして訂正します。
- 情報源: 埼玉県 移住支援金について(住むなら、埼玉。)
- 調査日: 2026年8月4日
対象外でも独自制度がある自治体
国の移住支援金の対象外でも、自治体独自の制度を設けているケースがあります。これが意外と見落とされがちです。
東京都の独自制度
東京都(多摩地域)26市は全市が対象外ですが、いくつかの市は独自の移住支援を行っています。
- 青梅市: 独自の移住支援金最大100万円+空き家バンク+お試し移住補助。多摩地域で最も手厚い
- あきる野市: KOTOSUM移住サイト運営+移住・定住相談窓口(土日祝対応・オーダーメイドで市内を車で案内)
- 福生市: 優良住宅取得推進事業(固定資産税相当額を最長5年間助成)
大阪府の独自制度
大阪府は33市すべてが国の移住支援金の対象外ですが、独自に動いている市があります。
- 泉佐野市: 独自移住支援金。単身で最大5年間に計100万円(年20万円)、世帯なら世帯員1名につき5年で50万円(年10万円)が加算されます。加算する人数に上限がなく、市は「世帯主・配偶者・子ども2人で5年間に計250万円」という例を示しています。一括支給ではなく毎年度の申請が必要です。移住元は「近畿2府4県以外」
- 和泉市: 南部地域等移住定住支援補助金。新築住宅取得または既存住宅改修で100万円、移住支援30万円、子育て支援として中学生以下の子1人につき25万円(人数の上限なし)。ただし100万円と30万円は併用できません(この記事では当初「最大130万円」と書いていましたが、併用不可のため成り立たない金額でした。2026年8月に訂正)
- 河内長野市: テレワーク移住支援補助(1世帯10万円)。ただし令和8年9月30日で終了が公表されています(申請受付は令和9年2月26日まで、予算上限到達時は早期終了)。市は「補助金を主な理由とした転入は少なく、効果が限定的」と説明しており、今後は住宅ストックを流通させる制度に切り替える方針です
なお、この記事では当初「大阪府で国の移住支援金の対象なのは富田林市・河内長野市など3市のみ」と書いていましたが、これも誤りでした。令和8年度の実施市町村一覧では大阪府内の43市町村すべてが空欄で、実施しているところはありません。
地域別の「対象率」を比べてみた
| 地域 | 対象市 | 全市 | 対象率 |
|---|---|---|---|
| 東北 | 76市 | 77市 | 99% |
| 中部 | 160市 | 164市 | 98% |
| 北海道 | 33市 | 35市 | 94% |
| 中国 | 49市 | 54市 | 91% |
| 四国 | 33市 | 38市 | 87% |
| 九州・沖縄 | 91市 | 119市 | 76% |
| 近畿 | 65市 | 125市 | 52% |
| 関東 | 64市 | 180市 | 36% |
東北と中部はほぼ全市が対象。九州・沖縄は福岡14市の不参加と沖縄の10市不参加が効いて76%。関東は36%しか対象になりません。同じ日本なのに、住んでいる場所で使える制度がここまで違うのは、正直驚きました。
調べてみて分かったこと
- 東京圏=全部ダメではない。 条件不利地域なら東京圏内でも対象になる
- 茨城県は32市中23市が対象。 制度上の東京圏には含まれず、多くの市で支援金がもらえる
- 神奈川県は三浦市だけ。 埼玉県も秩父市・飯能市・本庄市の3市のみ。首都近郊はかなり厳しい
- 対象外でも独自制度がある市がある。 青梅市や泉佐野市のように国の制度に頼らず独自路線を取る自治体もある
- 大阪府は東京圏ではないのに全33市が対象外。 制度上は移住先になれるが、府内で実施している市町村が1つもない
移住支援金の対象かどうかは確かに大事ですが、それだけで移住先を決めるのはもったいない。独自制度や住宅支援、子育て支援まで含めて比較すると、見え方がだいぶ変わります。
※ この記事は個人の調査に基づくものです。制度の詳細や最新情報は、必ず各自治体の公式ページでご確認ください。 ※ 調査データは2026年4月時点のもの(47都道府県792市)に、2026年8月の令和8年度再調査での訂正を反映しています。