空き家バンクは「あるだけ」では意味がない
47都道府県792市のうち644市(81%)が空き家バンクを運営しています。でも「運営している」と「実際にマッチングが成立している」は別の話。調べてみると、成約実績に大きな差があることが分かりました。
成約実績が際立つ自治体
調査の中で、空き家バンクの成約数が目を引いた自治体をまとめました。
三豊市(香川県)— 592件のマッチング
三豊市の空き家バンクは12年間で592件のマッチングを達成しています。これは全国トップクラスの実績です。
なぜ三豊市はこれほどうまくいっているのか。調べてみると、空き家バンクの運営に加えて、地域おこし協力隊や移住コーディネーターが手厚くサポートしている構造が見えてきました。「物件情報を載せて終わり」ではなく、相談から入居までを伴走する体制です。
江津市(島根県)— 空き家バンクの先駆者
江津市は2006年に空き家バンクを開設した全国の先駆者です。20年近い運営歴の中でノウハウが蓄積されており、空き家バンクの運営モデルとして他の自治体の参考にもなっています。「GO GOTSU!」という移住ポータルも充実しています。
尾道市(広島県)— NPOが主導する空き家再生
尾道市は「NPO法人空き家再生プロジェクト」が中心となり、140件以上のマッチングを実現しています。行政主導ではなくNPOが主導するモデルで、空き家を単に売買するだけでなく、リノベーションして地域の魅力を高めるアプローチが特徴的です。
斜面地に広がる古い街並みを活かした空き家再生は全国的に注目されており、他の自治体にも影響を与えています。
五島市(長崎県)— 離島移住の全国モデル
五島市は離島移住の成功例で、年間200人以上の移住者を受け入れています。空き家バンクは島の生活に不可欠な住まい確保の柱。離島ならではの「島暮らし」のイメージと、手厚い移住支援パッケージ(お試し移住あり・各種補助金)がうまく組み合わさっています。
伊達市(北海道)— 「北の湘南」の空き家活用
伊達市は北海道で最も温暖な気候を持ち、「北の湘南」と呼ばれています。温暖な気候を売りにした移住促進と空き家バンクを組み合わせ、道内外から移住者を集めています。「だて暮らし」というキャッチフレーズで移住促進に力を入れています。
空き家バンクの「成功パターン」
成約実績が多い自治体に共通する特徴をまとめました。
1. 専任のコーディネーターがいる 物件情報をウェブに載せるだけでなく、移住希望者と空き家所有者の間に立って調整するコーディネーターの存在が大きい。三豊市やNPO主導の尾道市が好例。
2. 改修補助金が充実している 空き家の状態が悪くても、リフォーム補助が手厚ければ「買ってから直す」という選択肢が取れます。
| 自治体 | リフォーム補助上限 |
|---|---|
| 吉野川市(徳島県) | 最大320万円 |
| 室戸市(高知県) | 最大240万円(補助率100%) |
| 土佐清水市(高知県) | 最大210万円(補助率100%) |
| 佐久市(長野県) | 最大240万円 |
| 白山市(石川県) | 最大200万円 |
| 静岡市(静岡県) | 最大200万円(移住者・子育て世帯) |
| 萩市(山口県) | 150〜200万円 |
高知県の室戸市・土佐清水市は補助率100%。空き家を買って直す場合、自己負担がほぼゼロになるケースもあります。詳しくは「空き家バンクとは何か」のリフォーム補助金セクションを参照してください。
3. 所有者への働きかけ 空き家バンクの課題は「物件が集まらない」こと。成功している自治体は、空き家の所有者に対して登録を促す活動を積極的に行っています。
4. お試し移住とのセット提供 「まず住んでみて、気に入ったら空き家バンクで物件を探す」という流れを作っている自治体は成約率が高い傾向があります。792市のうち288市(36%)がお試し移住制度を持っていますが、これと空き家バンクの両方がある自治体は特に強い。
5. 独自の移住ポータルサイト 移住情報がわかりやすくまとまったポータルを持つ自治体は、空き家バンクへのアクセスも増える。島根県では各市が独自ポータルを運営(はまだぐらし・いずもな暮らし・ますだのひと・やすぎぐらし等)しており、空き家バンクへの導線が整っています。
地域別の空き家バンク運営率
| 地域 | 運営あり | 全市数 | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 四国 | 38市 | 38市 | 100% | 全市で運営。県営プラットフォームとの連携も |
| 中国 | 53市 | 54市 | 98% | 尾道モデルの影響で活発 |
| 中部 | 156市 | 164市 | 95% | 長野・新潟が特に充実 |
| 東北 | 69市 | 77市 | 90% | 福島の復興関連需要あり |
| 九州・沖縄 | 100市 | 119市 | 84% | 離島は成約率が高い傾向。沖縄は2/11市のみ |
| 北海道 | 29市 | 35市 | 83% | 広い面積の物件が特徴 |
| 近畿 | 88市 | 125市 | 70% | 大阪(10/33市)が低い |
| 関東 | 111市 | 180市 | 62% | 都市部は空き家バンク不要 |
四国は100%。香川県は「かがわ住まいネット」で全市の空き家情報を統合しており、横断的に検索できる仕組みが使いやすいです。
逆に、沖縄県は11市中2市(那覇市・石垣市)しか空き家バンクがありません。移住人気が高すぎて、行政が空き家マッチングをしなくても住宅需要がある構造です。
空き家バンクを使うときの現実的なアドバイス
792市の空き家バンク情報を見てきた経験から。
物件数は少ないのが普通: 1つの自治体で数件〜十数件しか登録がないことは珍しくありません。「今すぐ理想の物件が見つかる」と期待せず、数ヶ月スパンで探すつもりで。
写真だけで判断しない: 空き家バンクの物件写真は情報量が少ないことが多いです。気になる物件があったら必ず現地を見に行くこと。
「空き家バンク経由」が補助金の条件: 多くの自治体で、リフォーム補助金を受けるには空き家バンクに登録された物件であることが条件です。不動産会社経由で見つけた空き家だと対象外になることがあります。先に物件を買ってしまうと補助金が使えないので、順番に注意。
全国版の空き家バンクも活用: 国土交通省の後押しでLIFULL HOME’Sとアットホームが全国版空き家バンクを運営しています。地域が決まっていない段階では、こちらから横断検索するのが便利です。
調べてみて分かったこと
- 三豊市の592件は全国トップクラス。 コーディネーターの伴走が成功の鍵
- 江津市は2006年から20年近い運営歴。 先駆者のノウハウが蓄積されている
- 尾道市のNPOモデルは全国的に注目。 空き家再生で地域の魅力も向上
- 五島市は離島×空き家バンクの成功例。 年間200人以上の移住者受入
- 成功パターンは「人の力」。 物件情報を載せるだけでは成約は増えない
- リフォーム補助が手厚い市は成約しやすい。 高知県の100%補助は突出
- お試し移住とのセットが効果的。 住んでみてから物件を探す流れ
空き家バンクは「見つけたらラッキー」くらいの気持ちで、のんびり探すのがいいと思います。いい物件は本当にすぐ消えるので、気になる市の空き家バンクはブックマークしてこまめにチェックするのが吉です。
※ この記事は個人の調査に基づくものです。成約実績は調査時点で確認できた情報であり、最新の数字は各自治体にお問い合わせください。 ※ 調査データは2026年4月時点のものです(47都道府県792市)。