「東京圏から」以外はダメなのか?
国の移住支援金は「東京23区に住んでいた(または通勤していた)人が地方に移住する」のが基本条件です。でも日本の人口のうち東京圏は約3割。残りの7割の人は移住支援金の対象外なのでしょうか?
792市を調べてみると、東京圏以外からの移住にも独自の支援金を出している自治体が見つかりました。
福島県12市町村 — 全国どこからでも対象
最も手厚いのが福島県の原発事故による避難指示が出ていた12市町村です。
| 区分 | 通常の移住支援金 | 12市町村の支援金 |
|---|---|---|
| 世帯 | 100万円 | 200万円 |
| 単身 | 60万円 | 120万円 |
| 対象 | 東京圏から | 全国どこからでも(福島県外から) |
| 子育て加算 | 18歳未満1人につき最大100万円 | 18歳未満1人につき100万円(東京圏からの移住のみ) |
南相馬市や田村市など、福島の12市町村は日本全国どこからの移住でも支援金の対象になります。大阪からでも名古屋からでも、条件を満たせば最大200万円。
ただし基本額と子育て加算で対象がずれます。 全国が対象なのは基本額(世帯200万円・単身120万円)のほうで、子育て加算100万円のほうは「12市町村に住民票を移す直前に、連続して3年以上、東京圏(条件不利地域を除く)に在住していたこと」が要件です。大阪や名古屋からの移住では加算はつきません。
この2つを足すと、東京圏から3年以上住んでいた世帯が18歳未満の子ども1人を連れて移住する場合、200万円+100万円で300万円になります。医療・介護・福祉の資格で就業する場合はさらに1人120万円の加算もあります。
なお国の移住支援金との併用はできません。 県のQ&Aに「『ふくしま移住支援金給付事業』との併用受給は可能か」→「国による補助金等を受けている事業との併用受給はできません」とあり、田村市・南相馬市ではどちらか一方を選ぶことになります(南相馬市も市の支援一覧で相互に「併用不可」と明記しています)。
※ この記事では当初、「通常の移住支援金と併用できるケースもあり、東京圏からの移住なら合計300万円になる可能性もあります」と書いていましたが誤りでした。300万円という額は2制度の併用ではなく、12市町村移住支援金の基本額200万円と同じ制度の中の子育て加算100万円で到達する額です。2026年8月5日に訂正しました。
- 情報源: 福島県12市町村移住支援金のお知らせ(福島県)/福島県12市町村個人支援金Q&A(PDF)/令和8年度移住関連支援一覧(南相馬市)
- 調査日: 2026年8月5日
福井県 — 2本立て。ただし額の桁が違う
福井県の移住支援金は東京圏型と全国型の2本立てです。東京圏型は世帯100万円・単身60万円という国の標準額ですが、全国型(県外どこからでも対象)は県と市町が協働して額を決めるため、市ごとにまったく違います。
基本額は単身5〜10万円・世帯10〜15万円で、東京圏型より一桁小さいのが基本です。ただし加算を積むと様子が変わり、坂井市140万円・大野市130万円・越前市128万円と、東京圏型の世帯100万円を超える市もあります。敦賀市は現金ではなくデジタル地域通貨で3年に分けて交付されます。
そして**全国型の共通要件は「東京圏型に該当しない方」**です。つまり両方は受けられません。桁が違うのは基本額のほうで、子育て世帯かどうか・どの市かで結論が変わります。→ 福井県9市の比較
北陸新幹線の敦賀延伸(2024年3月)でアクセスも改善されており、関西圏からの移住も視野に入れた施策を展開しています。
※ この記事では当初、福井県について「移住支援金の対象を比較的広く設定しています」とだけ書き、金額に触れていませんでした。福島・徳島を金額つきで並べる中で福井だけ額がないと同水準に読めてしまうため、2026年8月5日に金額と併給不可を追記しました。
- 情報源: 県外から移住される方へ移住支援金(全国型)をサポート!(福井県)
- 調査日: 2026年8月5日
山口県 — 東京圏以外にも拡大。ただし額はちょうど半分
山口県は移住支援金の対象を東京圏以外(愛知・京都・大阪・兵庫・広島・福岡)にも拡大しています。ただし拡大したぶんの額は、東京23区ルートのちょうど2分の1です。
| 移住元 | 世帯 | 単身 | 子ども加算 |
|---|---|---|---|
| 東京23区に在住、または東京圏から23区へ通勤 | 100万円 | 60万円 | 1人につき最大100万円 |
| 東京圏・愛知・京都・大阪・兵庫・広島・福岡に在住 | 50万円 | 30万円 | 1人につき最大50万円 |
県の実施要領にはっきりと「ただし、(ア)bの場合にあっては、各2分の1の額を支給する」と書かれています。この2つは排他で、23区ルートの要件を満たす方は拡大ルートの対象から除かれます。転入日にも条件があり、拡大ルートは東京圏・愛知・京都・大阪・兵庫が令和6年4月1日以降、広島・福岡が令和6年10月15日以降の転入に限られます。
市によっては、この拡大ルートが「〇〇市創生テレワーク移住支援事業補助金」のように別名の第2の補助金として運用されています。市の移住ページで「移住支援金 最大100万円」とだけ見つけたときは、それが23区ルートのほうではないか確認したほうがよさそうです。
山口県は地理的に関西と九州の間に位置するため、「東京圏から」という条件だけでは移住者を十分に集められないという判断があるのかもしれません。
※ この記事では当初、山口県について「対象を東京圏以外にも拡大しています」とだけ書き、金額に触れていませんでした。拡大ルートが半額であることが抜けていたため、東京圏型と同額に読める状態でした。2026年8月5日に訂正しました。
- 情報源: 大都市圏から山口へ!移住就業された方へ移住支援金を支給します!(山口県)/やまぐち移住就業支援事業・マッチング支援事業及び地方就職学生支援事業実施要領(PDF)
- 調査日: 2026年8月5日
徳島県 — 大阪圏からの移住支援
徳島県は四国で唯一、大阪圏からの移住にも支援金(世帯50万円、単身30万円)を出しています。
徳島は大阪から高速バスで約2.5時間。淡路島経由で比較的アクセスしやすく、大阪圏からの移住ニーズを取り込む戦略です。
大分県 — 県の移住支援金そのものが全国型
大分県は、国の移住支援金の枠組みを使いながら、移住元を東京圏に限定していません。東京圏からの移住に加えて、東京圏以外(全国)からの移住も対象になります。ただし東京圏以外からのルートには「39歳以下、または子育て世帯」という条件が付きます(令和7年10月1日から)。
大分県にはこれとは別枠で「移住応援給付金」という制度もあります。基本20万円に、子ども1人につき10万円、若年加算10万円、職種加算10万円(令和8年度新設)が積み上がる形で、市によって金額や加算の設計が変わります。
金額は市ごとの差が大きく、大分市・別府市のように基礎額が世帯60万円/単身40万円に減額されている市もあります。→ 大分県14市の比較
宮崎県 — 三大都市圏+福岡県
宮崎県は移住元の対象が東京圏+名古屋圏+大阪圏+福岡県と、全国でも広いほうです。九州内の福岡県が入っているのが特徴で、福岡から宮崎への移動も支援の対象になります。
ただし県内で一律ではありません。串間市だけは東京23区型に限定されていて、三大都市圏・福岡県の枠がありません。代わりに串間市では、県の「若者UIJターン促進事業」による若者応援給付金(30万円)が令和8年度から受け付けられています。
この給付金は、住民票を移す直前に連続1年以上、三大都市圏等(東京圏・名古屋圏・大阪圏、および福岡県)に在住し、その地域の事業所に通勤していた29歳以下の方が対象です。県内の中小企業への就職など、就業に関する9つの類型のいずれかを満たす必要があります。県の「宮崎県若者UIJターン促進事業実施要領」にもとづく枠組みで、県のページには「本事業の実施主体は市町村です」「実施していない市町村もあります」と書かれています。市町村側の制度名は「○○市若者応援給付金」となります(→ 宮崎県の市町村別の実施状況)。
移住支援金との関係については、県のページに「移住支援金等の移住支援制度の対象となる方については、若者応援給付金の支給対象外となる場合があります」と書かれており、串間市のページでは移住支援金との併用は不可と案内されています。
なおこの記事では当初、これを「令和8年度新設の若者UIJターン支援金」と書いていましたが、2つ誤りがありました。制度の名称は事業名が「若者UIJターン促進事業」・給付金名が「若者応援給付金」であること、そして令和8年度に新しいのは串間市の実施であって制度そのものではないこと(宮崎市などでは令和7年度から実施されています)。2026年8月に訂正しました。
- 情報源: 若者UIJターン促進事業(あったか宮崎ひなた暮らし・宮崎県)/移住定住支援(串間市)
- 調査日: 2026年8月4日
都城市のように、そもそも移住元を問わない市独自の制度を持っている市もあります。
秋田県 — 現金ではなくデジタル商品券(令和8年度からの2年間限定)
秋田県は令和8年度から「秋田暮らし応援デジタル商品券交付事業」を始めています。移住元が東京圏かどうかを問わず、在学期間を除いて秋田県外に3年以上住んでいた方が対象です。
金額は世帯区分別で、子育て世帯100万円・夫婦世帯(ともに39歳以下)70万円・単身世帯(39歳以下)50万円・その他世帯10万円。県の移住・就職サイト「あきたジョブ」経由で県内に就職すると10万円が加算され、最大110万円分になります。
ただし給付は現金ではありません。県内のPayPay加盟店で使うデジタル商品券で、税金や保険料の納付・医療費の自己負担分などには使えず、使用期限もあります。国の移住支援金とは併給できません(受給予定の方も対象外)。対象は令和8年4月1日から令和10年3月31日までの移住で、2年間限定の制度です。
- 情報源: 秋田暮らし応援デジタル商品券交付事業(秋田県)
- 調査日: 2026年8月1日
佐賀県 — 期限付きの県独自制度(令和8年12月31日転入まで)
佐賀県は「未来につなぐさが移住支援事業」という県独自の制度を実施しています。移住元が実質的に全国で、世帯100万円/単身60万円。令和8年12月31日までの転入が対象という期限付きの制度です。
県内10市のうち9市が参加しています(鳥栖市のみ不参加)。期限がある制度なので、検討している方は早めに各市へ確認したほうがよさそうです。
福岡県 — 「23区要件」がない類型別の設計
福岡県は国の移住支援金を使っていますが、東京23区に住んでいた・通勤していたという要件がありません。移住元を「三大都市圏から」「県外から」という類型で分ける設計になっており、東京23区と縁がなくても対象になり得ます。
ただし実施しているのは県内29市のうち15市で、福岡都市圏の13市は制度そのものがありません。加算も市ごとに設計が違い、北九州市は子どもの人数で100万→50万→30万と逓減、大牟田市は移住元によって額が変わり、田川市は加算なしです。
岐阜県 — 「清流の国ぎふ移住支援補助金」は終了していました(2026年8月 訂正)
この記事では当初、岐阜県の「清流の国ぎふ移住支援補助金」(全国からの移住者が対象・世帯50万円/単身30万円)を代表例として紹介していました。**2026年8月に調べ直したところ、この制度は令和6年度をもって終了していました。**お詫びして訂正します。
県の移住ポータル「ふふふぎふ」の「県の支援・補助金」ページからは令和7年度(2025年4月)に記載がなくなっており、令和8年度も掲載はありません。県庁の移住支援金ページに残っているのは「清流の国ぎふ移住支援金(令和2・3年度受給の方はこちら)」という過年度受給者向けの案内だけです。
さらに、実施されていた当時も「全国からの移住者が県内どこでも一律50万/30万」ではありませんでした。この補助金は県が市町村の事業を支援する形(清流の国ぎふ移住支援事業費補助金)で、県が公表した令和6年度の実施市町村一覧では21市のうち実施は9市のみ、金額も市ごとに異なり(多治見市 世帯50万/単身30万、恵那市 世帯20万/単身10万、郡上市 世帯10万/単身5万 など)、対象も「39歳以下の方、または過疎地域へ移住する方」に限られていました。
現在も残っているのは、恵那市が市の制度として続けている同名の「清流の国ぎふ移住支援金」(世帯20万円/単身10万円、18歳未満の子どもが世帯にいる場合は世帯につき10万円加算。39歳以下・県外に5年以上在住が条件)です。
令和8年度に岐阜県が実施している県制度のうち、東京圏以外からの移住も対象になるのは岐阜県林業就業移住支援金(単身60万円/2人以上世帯100万円)です。県外から岐阜県内へ移住して林業に就業する方が対象で、県と市町村が共同で支給します。全国型ではありますが、就く仕事が林業に限定される点が「清流の国ぎふ」とは性格が異なります。
- 情報源: ふふふぎふ 県の支援・補助金/岐阜県 移住支援金/恵那市 清流の国ぎふ移住支援金
- 調査日: 2026年8月1日
なぜ「東京圏限定」が多いのか
ここで少し制度の背景を整理します。
国の移住支援金が「東京圏→地方」に限定されているのは、東京一極集中の是正が政策目的だからです。地方から地方への移動(例: 大阪→高知)は「一極集中の是正」にはカウントされないため、国の制度の対象外になっています。
しかし現実には、移住者の出身地は東京圏に限りません。大阪や名古屋から地方に移住したい人もたくさんいます。そこで一部の自治体が自腹で(県の予算で)全国対象の制度を作っているというのが現状です。
東京圏以外の人が使える支援の探し方
国の移住支援金がもらえなくても、使える制度はあります。
1. 県独自の移住支援補助金を確認 大分県、宮崎県、佐賀県、福井県、山口県、徳島県のように、県レベルで独自制度を持っていたり、国の制度の移住元要件を県として広く取っているケースがあります。
2. 住宅支援を重点的に探す 住宅取得補助やリフォーム補助は、移住支援金と違って移住元を問わない制度が多いです。美祢市(山口県)の300万円や室戸市(高知県)のリフォーム補助100%などは、東京圏からでなくても使えます。
3. 空き家バンクを活用 空き家バンクも出身地を問いません。654/792市(83%)が運営しているので、選択肢は広いです。
4. お試し移住を利用 お試し移住制度も出身地の制限はほとんどありません。295/792市(37%)が制度あり。
調べてみて分かったこと
- 福島12市町村は全国どこからでも対象。 基本額200万円で最も手厚い。ただし子育て加算100万円だけは東京圏からの移住が条件
- 大分・宮崎・佐賀・福岡は県単位で移住元の枠を広げている。 大分は全国型、宮崎は三大都市圏+福岡県、福岡は三大都市圏+県外、佐賀は期限付きの県独自制度
- 宮崎には移住支援金とは別に「若者応援給付金」(30万円・29歳以下)がある。 移住元の枠は三大都市圏+福岡県。実施は市町村ごと
- 福井・山口・徳島も東京圏以外にも独自支援。 県の予算で対象を広げる運用
- 枠を広げた県は、広げたぶんの額が小さいことが多い。 山口は東京23区ルートのちょうど半分(世帯50万/単身30万)、徳島の大阪圏型も東京圏型の半分(世帯50万/単身30万)、福井の全国型は基本額が単身5〜10万円と一桁小さい。宮崎も単身だけ60万円と30万円に分かれます。「対象が広い」と「額が同じ」は別の話です
- 枠が2本あるとき、たいてい併用はできません。 福井の全国型は「東京圏型に該当しない方」が要件、山口の拡大ルートは23区ルートの対象者を除く建て付け、福島12市町村も国の制度とは併給不可です
- 岐阜の「清流の国ぎふ」は終了していた。 全国型の県制度は年度で消えることがある(2026年8月に訂正)
- 住宅支援やリフォーム補助は移住元を問わない制度が多い。 移住支援金がなくても使える
- 空き家バンク・お試し移住も出身地不問。 移住支援金以外の支援は意外と開かれている
- 「東京圏限定」は国の制度の制約。 自治体レベルでは徐々に対象を広げる動きがある
「東京圏以外からだと何ももらえない」と思い込んでいる人が多いのですが、実際はそうでもありません。移住支援金だけにこだわらず、住宅支援や子育て支援まで含めて広く探すと、使える制度は見つかります。
※ この記事は個人の調査に基づくものです。制度の詳細や最新情報は、必ず各自治体の公式ページでご確認ください。 ※ 調査データは2026年4月時点のもの(47都道府県792市)に、2026年8月1日・8月4日・8月5日の再調査での訂正を反映しています。